If もしも

昨年の夏、岩井俊二監督の『打ち上げ花火 下から見るか?横から見るか?』が無料配信された。昨年三月の震災を受け、宮城県仙台市出身の岩井監督が、津波の被害を受けた千葉県飯岡町を舞台にした『打ち上げ花火~』を夏休み限定の7月22日から8月31まで無料配信をしてくれる、という流れは、ネットで知った。
 私は1993年『If もしも』というテレビ番組で『打ち上げ花火~』を観た。本当に偶然観た番組だったが、観た後の感動は、ずっと残っていた。数年後、レンタルビデオ店で『打ち上げ花火~』が、再構成され映画化された作品を見つけて、それを自宅で観た。
 それから14年が経ち、パソコン画面で『打ち上げ花火~』を観た。打ち上げられる花火を横から見ると、丸いのか平べったいのかを確かめるため、小学生の男の子たちは花火大会の夜、灯台へ行く計画を立てる。同じ日、親の都合で夏休み明けには転校することになったなずなは、典道と祐介二人のうち、クロールで勝った方を花火大会に誘おうと思いつく。
『if もしも』という番組の通り、典道がクロールのターンで足をぶつけて負けてしまう一つめのストーリーと、その結果の祐介の裏切りを知り、後悔した典道がクロール競争の分岐点まで遡り、勝つ二つめのストーリーが展開された。
 なずなを演じる当時14歳の奥菜恵は、はっとするほどにきれいで、大きな真っ直ぐな目は、ノスタルジックで切ないこの映画全てを象徴しているように思えた。
 典道となずなは夜の学校のプールに忍び込み、泥棒みたい、と笑う。「何盗む? この水全部?」となずながプールの水を素足で蹴り上げる。この場面を作り上げる感性を、私はとても尊いと思った。プールに入ってはしゃぐ二人は、打ち上げられた花火を仰ぐ。流れるREMEDIOSの『Forever Friends』が、とてもいい。
 一つめのストーリーでは祐介の裏切りに、典道は「俺は裏切らない」と言うが、なずなは「裏切るよ、絶対」と声を詰まらせ、二つめのストーリーでは転校することを打ち明けないまま、なずなは典道に笑い掛ける。映画の中での奇跡にも思える一方、誰もが、その両方の気持ちをどこかで知り、どこかで向けられたことがあるのかも知れない、そんなことを思った。

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